お試しサテライトオフィスが遂に始動|水上村視察ツアーによる企業誘致施策【Vol.4】
緑が生い茂る山林に囲まれ、清らかな球磨川源流が流れる熊本県の水上村。
人口約2,100人が暮らす小さな山村は、人口減少という大きな課題を抱え、地域活性化と雇用創出に繋がる企業誘致に注力しています。
2020年10月、企業誘致を実現させるにはどうしたらいいか?というディスカッションを行う水上村Chakkathon(チャッカソン)」が開催されました。
チャッカソンでは、水上村の魅力をたっぷり体験できる「お試しサテライトオフィス(水上村視察ツアー)」などの企業誘致を目標とした施策が続々と誕生。
そして2021年12月、お試しサテライトオフィス(水上村視察ツアー)が初めて実施されました。
私たち取材班は、チャッカソンから始まった壮大な企業誘致プロジェクトの行方を追うため、お試しサテライトオフィスに参加した「株式会社reQ」を密着取材しました。
水上村チャッカソンで誕生したサテライトオフィスとは?
チャッカソンとは、アイデアとマラソンの造語である「アイデアソン」と、アイデアに着火するを意味する「チャッカ」を合わせた言葉です。
人口減少問題に悩む水上村で、企業誘致を成功させる大きな目標を掲げ、具体的な施策アイデアを出し合い、そしてアクションに繋げるのがチャッカソンの目的です。
2020年10月、石倉交流施設で開かれたチャッカソンには、水上村役場職員をはじめ、教育委員会、地元企業、地域おこし協力隊、IT企業などから水上村を救いたい有志が参加しました。
そして、2日間にわたるディスカッションを経て「企業の方に水上村を知ってもらえるフックとなり、水上村の魅力を存分に生かせる企業誘致施策」が誕生したのです。
お試しサテライトオフィス|水上村視察ツアー
水上村でととのう”Totonou”|天空のサウナ
空き地・空き家の有効活用
5Gインフラ整備の実現
2030年に目を向けた実証実験の村づくり
この記事では、チャッカソンで誕生した施策で初めて本格始動する「お試しサテライトオフィス(水上村視察ツアー)」を取り上げています。
チャッカソンで誕生した他の施策が気になる方は、以下の密着取材記事をぜひご覧ください。
水上村チャッカソンVol.1|水上村で企業誘致を目指す一大プロジェクトが始動!
水上村チャッカソンVol.2|アイデアに着火せよ!ディスカッションに密着!水上村チャッカソンVol.3|水上村の未来を変えるアイデアと施策が誕生!
水上村の魅力を存分に伝えられるお試しサテライトオフィス
地方進出を考えているIT企業やリモートワークの地を探している事業主にとって、大きな不安要素はITインフラ環境でしょう。
「お試しサテライトオフィス」は、快適にインターネットを使えるようにコワーキングスペースに高速Wi-Fiを完備し、自然豊かな水上村で実際にお仕事をしていただく視察ツアーです。
視察ツアーのプログラムには、自治体の方や地域住民と触れ合える機会を提供し、水上村の魅力に触れられる名所の案内などが計画されています。さらに、美味しい食事やリラックスして休める宿泊施設なども手配。
企業の方に「水上村で暮らし、働き、そして遊ぶ」ことを具体的にイメージしていただくのが、おためしサテライトオフィスの目的です。
株式会社reQがお試しサテライトオフィスを体験
初となるお試しサテライトオフィス(水上村視察ツアー)は、2021年12月13日〜14日の2日間にわたり実施されました。
視察ツアーに参加してくださった企業は、鹿児島県南九州市を拠点とする「株式会社reQ(リキュウ)」です。
株式会社reQでは、鹿児島県の特産品であるお茶と全国の銘菓をマッチングさせ、ユーザーの自宅へポストサイズで配送する、企業向け福利厚生サービスの実現を目指しています。
昨今におけるリモートワークの急増によって、社員同士のコミュニケーションに課題を抱える企業が増えています。
そんな企業に対して、株式会社reQは企業の社員同士で同じお茶を飲み、同じ銘菓を食べられる体験を提供。同じものを味わうことで、離れた場所にいる社員同士が共有の話題で盛りあがることができます。
株式会社reQは、企業の社員同士のコミュニケーション不足の解消を支援するとともに、お茶や銘菓の生産者と新たな販路開拓を目指すというビジョンも掲げています。
水上村視察ツアーに参加してくださった理由について
水上村視察ツアーに参加してくださった理由を百瀬さんに伺ってみました。
「お茶は全国各地それぞれに個性があり、作り手さんの気持ちやストーリーもあります。各地方のメーカーさんやお茶農家の方々とお話をしたいというのが、今視察ツアーに参加した大きなきっかけです。」(百瀬さん)
水上村にはお茶農家さんがおり、水上村と相良村の標高差を生かし、球磨川源流域の美味しい水を使ったお茶を製造しています。
百瀬さんは、視察ツアー参加前から水上村のお茶農家さんとお話したいと懇願されていたようです。また、普段リモートワークをしていることも参加のきっかけになったそうです。
「僕たちは普段リモートワークをしています。ワーケーションという形で、お互い顔を合わせながら仕事をする働き方がどんなものか体験してみたいと思いました。」(百瀬さん)
水上村のお茶によって実現したお試しサテライトオフィス。
一体どんな出会いや体験が待っているのか?
お試しサテライトオフィス1日目|水上村を知り、楽しむを体験
お試しサテライトオフィスの水上村視察ツアー1日目は、以下のプログラムで進行しました。
【1日目のスケジュール】
水上村役場職員からの挨拶(石倉交流施設)
水上村視察(市房山キャンプ場、市房山神社など)
お茶農家への訪問(浜川園製茶)
農家の宿へチェックイン
まずは遠方から来てくださった株式会社reQに対して、水上村役場職員からのご挨拶や水上村の現状の説明などが石倉交流施設で行われました。
石倉交流施設で水上村役場職員とご対面
両者の挨拶が行われた石倉交流施設は、会議や集会、イベントで利用される多目的スペースです。
チャッカソンの舞台にもなった石倉交流施設で、水上村役場職員と株式会社reQのお二方が対面しました。
水上村役場職員から、水上村の特長や現在抱える課題などが説明され、真剣に聞き入る百瀬さんと前迫さん。
株式会社reQは、現在の事業や将来のビジョンなどを役場職員にお話されていました。
水上村には、春になると美しい一万本桜が咲き誇る市房ダム湖や、神秘的な樹林が広がる市房山の原生林など、都会に住む人が思わず言葉を失い、写真撮影に夢中になってしまう魅力的なスポットがたくさんあります。
しかし、水上村の人口減少問題を解決するには、雇用創出や地域活性化を支援してくださる外部の企業の力が必要とされている状況です。
地方創生に注力する都道府県や市町村が数ある中、水上村を選んでくださった株式会社reQに「水上村の魅力を知っていただき、お互い何かを与え合いたい」という姿勢が水上村役場職員から感じられました。
水上村の大自然を全身で感じられる名所へご案内
石倉交流施設を出た後、水上村の大自然を全身で感じられる名所へ案内されました。
最初に訪れた市房山の登山口にある「市房山キャンプ場」は、美しく清らかな球磨川の水源が流れる水上村一押しの宿泊施設です。
江戸時代の頃には宿泊所があった、古い歴史のあるキャンプ場。
キャンプ場の奥には、村鳥のセキレイや国指定天然記念物ゴイシツバメシジミなどが生息する、神秘的な原生林が広がっています。
市房山の原生林に足を踏み入れた御一行。
一面に広がる原生林の緑と、力強く生きる樹木に心を奪われます。
百瀬さんと前迫さんが興味津々の巨大な市房杉は、樹齢1,000年といわれています。
市房山にある「市房神社第二鳥居」は、人気アニメ「夏目友人帳 伍」のキービジュアルの背景となり、話題を集めました。
森林セラピーも実施されている市房山の原生林は、都会の喧騒に疲れた人を心から癒やしてくれるでしょう。
水上村のお茶農家「浜川園製茶」で生産者とご対面
水上村のお茶農家さんとお話したいと懇願されていたお二方は、水上村のお茶農家「浜川園製茶」へ案内されました。
濱川俊一郎さん・裕子さんご夫妻と、濱川隆浩さん・彩美さんご夫妻で営む浜川園製茶では、標高約380mの地形を生かし、球磨川源流域の美味しい水を生かしたお茶づくりをしています。
毎年5月から8月にかけては、茶摘みの様子も見られるようです。
濱川さんご家族は、日本のお茶に対してこだわりを持つ株式会社reQのお二方を、製造工場の中まで案内してくださりました。
製造の裏側を見ることができ、生産者から直接お話を聞けたのはとても貴重な体験となったようです。
農家の宿「茶乃実」で水上村のお茶を味わう
水上村視察ツアーでは、水上村が自信を持ってご案内できる宿泊施設も手配しています。
今回の宿になったのは、浜川園製茶さんが営む、お茶好きにはたまらない農家の宿「茶乃実」です。
びっくりするほど高い天井が広々とした空間を演出し、あたたかい木に囲まれた部屋が心にやすらぎを与えます。
茶乃見では、浜川園製茶で製造された自慢のお茶が振る舞われました。
20年以上農薬と除草剤を使わず有機肥料主体で栽培したお茶は、舌が肥えた人でも思わず「うまい」と声に出してしまうほどの絶品です。
お茶農家さんと貴重な時間を過ごせた株式会社reQのお二方は、こう話されました。
「お茶の仕上げに使う熱風機をストーブにするのは、なかなか発想できないことです。茶乃実さんがやられているのはすごく価値があることだと思いました。日本茶やお茶が好きな人が泊まるのにすごく適した宿で、”きらりと輝くもの”を感じられましたね。」(前迫さん)
「お茶農家さんの創意工夫ってすごく印象深くて、ストーリーを交えて飲むと味わいが違うんです。オンラインでいつでもどこでもつながれる時代なので、”こういう人たちがつくっているんだよ”ということを知る場、伝える場があってもいいのかなって思いますね。自分たちも何かお手伝いできるのではないかと思いました。」(百瀬さん)
想像以上の盛り上がりを見せた懇親会
お試しサテライトオフィスでは、地域住民と美味しい食事、お酒を囲んで交流を深める懇親会も重要なプログラムとして組み込まれています。
水上村で暮らす人のあたたかさとやさしさに触れられたことで、水上村に対する印象も大きく変わったそうです。
地産地食の料理と地域自慢の球磨焼酎を堪能しながらの歓談は、想像以上の盛り上がりを見せました。
懇親会の後は茶乃実へ帰り、1日目の水上村視察ツアーは終了しました。
お試しサテライトオフィス2日目|水上村で働くを体験
視察ツアー2日目、再び石倉交流施設を訪れた株式会社reQのお二方。
この日は、熊本県職員の方から補助金の説明や事業内容の確認などがオンラインで行われ、その後、施設内でお仕事体験をする流れとなりました。
100人程度のキャパシティの石倉交流施設は、リモートワークの拠点として十分なインフラ環境や設備が整っています。
水上村で「働く」を体験された百瀬さんと前迫さんに、感想などをお聞きしてみました。
ーーー石倉交流施設を見た印象は?
「開放感や吹き抜けの感じがめちゃくちゃかっこいいです!イケてるなって思いました!」(前迫さん)
「電気が多めで明るい印象が強いです。ドアも今どきっぽくてキレイですね。建物自体の良さを部分的に残しつつ、石倉をリノベーションしてオフィスやフリースペースにしているところってあまりないと思うので、かっこいいなと思いました。」(百瀬さん)
これまでさまざまなコワーキングスペースを見てきたお二方にも、石倉交流所の外装・内装デザインは好印象だったようです。
ーーー石倉交流施設の通信・設備は満足できましたか?
「前職が通信会社なので、スマートフォンの通信はちょっとだけ気になりました(笑)。ですけど、音響、ディスプレイ、プロジェクター、ホワイトボードなどが備わっているのは助かりますね。通信だけではなく、他の部分が充実しているのは大切だなと思いました。」(百瀬さん)
「石倉交流施設にあるような備品って、揃っていない場所も多いんですよ。」(前迫さん)
石倉交流施設では、リモートワークに必要な以下のものを完備しています。
大型プロジェクター
ホワイトボード
黒板
ディスプレイ
電源タップ
高速Wi-Fi
テーブル
椅子
リモートワークの新たな拠点を探しているお二方にも、石倉交流施設の充実した設備は合格点をいただけたようです。
水上村では、ITインフラ環境のさらなる強化を目指しています。
チャッカソンでは、人口僅か2,100人の水上村で5Gインフラ整備を行い、世界を驚かせる企業誘致の施策アイデアも誕生しました。
将来的に5Gインフラ整備が実現すれば、快適なリモートワーク・ワーケーションの地として注目を浴びることは間違いないでしょう。
株式会社reQがお試しサテライトオフィスを振り返る
水上村の自然、文化、そして地域住民に触れた百瀬さんと前迫さん。
2日間にわたるお試しサテライトオフィスの感想や、気持ちの変化などをお聞きしました。
ーーー水上村を実際にその目で見た感想をお聞かせください
「水上村の存在は知りませんでした。実際に来てみたら、里山らしい里山だなと。人吉から30分程度で来られるので、田舎暮しや古民家暮らしに憧れている人には向いているなと思いました。これから若者が増えていったとき、どんな村になっていくんだろうと期待感を感じられる村でした。」(前迫さん)
ーーーお試しサテライトオフィスを体験してみていかがでしたか?
「仕事の場合、東京ならアクセスの良さなどを取りますが、地方のサテライトオフィスでは逆だと思っています。アクセスよりも、その地域に体験の場がどれだけあるかというのが重要なんです。茶乃実さんとお話して宿に泊めていただきましたが、実際に体験しないとこの魅力って気づけないと思うんです。夜の懇親会で地域住民の方と触れ合えたことによって、来たときと今とで印象も変わりました。」(百瀬さん)
ーーー水上村に進出した場合、やってみたい試みはありますか?
「現在の事業を始めたきっかけは、『働く人が、働くところの中にいる”豊かさ”を見出せていない』と思ったからです。豊かさとは自然や人と人との触れ合いのことです。働く人が、町のいろんなアセットを組み合わせながらワーケーションをする中で、いろんな挑戦ができるような場所づくりのサポートができるんじゃないか?と考えています。」(百瀬さん)
「まずは水上村を知ってもらうことが大切です。実際に訪れてみないとわからないことが多いので、まずは茶乃実さんのお茶が『水上に行ってみよう!』というフックになると思いました。」(前迫さん)
「自宅で茶乃実さんのお茶を体験してもらい、茶乃実さんのストーリーを知ることで『こういう人がこんな場所にいるんだ』という興味をもってもらえます。その後、どうやって水上村に行けばいいのか?と考えてもらえるためのきっかけづくりはお手伝いできるんじゃないか、と思いました。」(百瀬さん)
ーーーまた水上村を訪れたいと思いましたか?
「お茶にどっぷりつかれる宿があり、実際に体験することでアイデアが生まれると思いました。また来たいですね!」(前迫さん)
「reQは今後3人目、4人目とメンバーを増やしていけるように頑張っていて、新しいメンバーにも水上村に来てもらえたらいいなと考えています。また視察ツアーで合宿的にやらせていただけたら、次は2回目なので僕らもちゃんと準備できると思います。」
役場全面協力・みずかみのワーケーションに参加してみませんか?
清らかな球磨川の源流が流れる水上村には、春になると市房ダム湖に咲き乱れる一万本桜や、市房山の神秘的な原生林など、大自然が生み出した多くの宝が存在します。
地方でリモートワークの拠点やサテライトオフィスをお探しの方は、水上村村長を筆頭に役場全面協力の「みずかみのワーケーション(お試しサテライトオフィス)」に参加してみませんか?
石倉交流施設をはじめとする、高速Wi-Fi完備のコワーキングスペースを無料で利用でき、水上村までの交通費・宿泊費の補助を最大6泊分受けられます。(先着10社2名様まで)
応募方法やツアー概要については「みずかみのワーケーション公式サイト」でご覧になれますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
水上村のあたたかくやさしい役場職員と地域住民が、あなたをお待ちしております。